料理写真(60点)を無料で調達するために彼がやったこと
僕のクライアントで料理写真60点を無料で調達した男がいるので、その忌まわしき手法を紹介したいと思います。
彼は、飲食店経営者です。質の高い料理写真を調達することが、マーケティング上の至上命題でした。
飲食店が写真を用意するためには、
- プロに頼む
- 自分で撮る
のどちらかになります。
自分で撮っちゃえば撮影費はかかりませんが、それだとクオリティがちょっと。。
彼が選んだのは前者です。
撮りたい料理は20品。1品につき3アングル撮るので、合計で60カットです。
これくらいの品数であれば、1日で全品撮ってしまうのがセオリーでしょう。2日以上かけてしまうとカメラマンの出張費がかさみます。
20品×3カット=60カットを撮るとなると、カメラ側のセッティングから調理にかかる時間含め、だいたい6時間くらいかかります。費用感は、5〜6万円くらいが相場ではないでしょうか。
彼にとって、上記は非現実的な条件でした。
撮影費や所要時間もそうですが、彼が最も気にしていたのは、「撮影用に調理したほとんどの食材が無駄になる」という点です。
- 20品もの料理、誰が食べるんですか?
- ゴミ箱行きですか?
- いい食材使ってんすけど?
という問題が、彼を悩ませていました。
確かにその通りです。2〜3品は誰かの食事になるとしても、人間の胃袋には限界があります。それ以外全部がゴミ箱行きってのは、なんともしのびない。
そこで、あの忌まわしき手法が生まれます。
8日間に分けて1日2〜3品撮る
はい、これです。
撮影費ゼロ円で1日2〜3品ずつ、8日間に分けて撮影することにしました。
お店側の負担は、食材の仕入れ費と持ち帰り用のパック代のみ。
無料で撮影してもらう代わりに、撮影した料理はカメラマンが持って帰って食べていいことにしたのです。
こうすることで、カメラマンは出張費だけの自己負担で8日分の食事代がタダになるのでした。
最も懸念していた「食材が無駄になる」という問題をもクリアしています。全部カメラマンがありがたく食ってくれるのですから。
ちなみに「出張」と言っても、カメラマンの家からお店まで、車で15分くらいの距離です。
そしてその撮影を担当したカメラマンがコイツです。↓

まあ僕なんですけど。(笑)
ウチは5人家族(うち1人が乳幼児)です。4人分の食事代が、8日間にわたり無料となりました。しかも、プロが作った料理が、です。サイコーです。幸せとはこれのことです。みなさん。
7日目の晩ごはんがコレです。
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そして、8日目の晩ごはんがコレです。
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2日連続回らない寿司です。なんなら2日目の方がグレード上がっとります。1万円相当。
彼には悪いが、さすがに2日連続でこのレベルの寿司を食らうのは僕も家族もキツかった。
だから、最終日は義兄家族(3人)を招待してみんなで食べました。
全員大喜びです。これが「幸せ」というやつです。みなさん。
さて、この「カメラマンタダ飯作戦」、以下のようなメリットを生みました。
- 撮影費が無料になる
- カメラマンの食費が浮く
- 食材が無駄にならない
はい、この3つは説明しましたね。
実はこれだけではありません。隠れたメリットがあと2つあります。
- 料理の宣伝になる
- 僕がサービスを体感する
説明しましょう。
料理の宣伝になる
僕(カメラマン)はもちろんのこと、僕の家族と義兄家族もここの料理を喰らいました。
はっきり言って美味しかったです。全員が「また食べたい」と申しております。これを宣伝効果と言わず、なんと言うでしょう。
これが、隠れたメリットの1つめです。
これはまあ、わかるじゃないですか。
2つめがちょっとわかりづらいかもしれないので、ちゃんと説明しますね。
僕がサービスを体感するということ
寿司を持ち帰った時の家族の反応、食べた時の満足感、最終日に招待した義兄家族からの感謝具合、そしてその食事会のまあ楽しいこと楽しいこと。
「うまい寿司があると、人間ってこんなに幸せを感じられるんだな」
と、僕自身が身を持って体感したことが何よりも大きい。
なぜなら。
僕はこのお店のマーケティングのお手伝いをしています。Web上にコンテンツを作って、広告やSNSで認知を広げ、お客さんを増やしたり売上を上げたりといった仕事をしているわけです。
その僕が実際にお店のサービスを受け、お客さま気分を疑似体験し、心を動かされたのです。
これにより、マーケティング施策の具体的なアイデアがドバドバと出てきています。
経済は感情で動くそうです。
お客さんが体感する「感情」を疑似体験できたのですから、そこから逆算すれば施策なんていくらでも思いつきます。僕からすると、
- うまいのわかってるから宣伝しやすい
- 喜ぶのわかってるから宣伝しやすい
というわけです。もう勝ちが決まりました。ご馳走様でした。
体感しないとわからないこと
以前からヒアリングはしていたので、僕の中でなんとなくお店のイメージとか料理のグレードとかはわかっていたつもりでした。
その飲食店の彼は料理人です。ほんの少しだけ、職人気質なところがあります。
料理に関しては、必要以上に謙遜していました。
実際に料理を体感すると、聞いていた印象よりもだいぶ「贅沢」であることがわかりました。(良い意味で。)
「ウチはそんなたいしたことない」とか言ってたんですよ。
どこがだよ。びっくりしたわ。
贅沢品とそうでないものとでは、売り方が違います。
マーケティングでは、贅沢品は贅沢品としてメッセージを打ち出さないとうまくいきません。
危なかった。
あのまま彼の謙遜を鵜呑みにしてると、失敗させてしまうところでした。
特に、これを持ち帰った時の家族の「うわー!」という感嘆の声は、今でも耳に残っています。
「あ、こんな喜ぶんや。」と思ったのでした。
ああいうのは体験しないとわからない。日頃から体験の重要性はわかっていたつもりでしたが、あれほどまでに印象が塗り替わるとは。
いやホント、、謙遜し過ぎだよ。
クライアントさんへ
今回はたまたま色んな要素が重なり、撮影費を無料にすることができました。
このプラン、僕が提案したのか彼から切り出されたのか、もう忘れました。
こういうこともあるんですね。
この仕事、1円ももらっていませんが、「2020年最高の仕事」の1つです。
交渉材料はお金だけとは限らない。
2人で力を合わせて「不可能を可能にする」という貴重な体験ができました。
ご馳走様でした。すし若さん。
また食べに行きます。